山本正之のズンバラ随筆  第27話 NY盛夏の豪遊

 

うわ

いっけねーー、ハイロウズのライブにいくんだったーー

 

と、焦ったモノの、日本でのヒロトくんとの打ち合わせでは、NY時間で7月

11日の夜、ボクが彼のホテルに電話して、12日、二人でどうやって遊ぼう

か相談しましょ、ということでした。実際に11日の夜、電話したけれど、ど

うも、タイミングが合わず、ま、ライブはいいかってな解釈を、ボクは勝手に

していたのですが、後で聞くところによると、ヒロトくん、ボク用にチケット

を支度してくれていたとのこと。そんな予測も併せての、

うわっ、いっけねーー、でした。

 

ピアノをあけ、「キミの夏」を弾き始めた時、電話が鳴った。

「あっ、まさゆきさん、いましたね、よかったーー、」

「ライブ気持ち良かったみたいで、よかったね、」

「はい、そいでね、メンバーはみんな今、イーストビレッジのレストランへ

 行っちゃったんですけど、ボク、ひとりなんです、まさゆきさん、

 遊びましょ、」

「うん、もちろんだよ、どこで逢おうか」

「それはもう、NY先輩のまさゆきさんにおまかせします」

「じゃあねえ、グリニッジで、黒人のおばちゃん歌手がカウンターにすわって

 オールドジャズ歌ってるバーに行こうか」

「まあー、そんなところ知ってて、まさゆきさん、かっこよすぎます、」

「そう?、じゃ、とにかく一度ボクのアパートの前までTAXIでおいでよ、

 そこで二人でかんがえようよ」

「はいはい、そうします、今すぐ、TAXIに乗りますね」

「うん、チェルシーだったよね、そこからだったらほんの10分くらいでここ

 まで来ちゃうから、うん、ボク、夕涼みがてら、エントランスの階段に座っ

 て待ってるから」

「はい、それでは、あ、と、で、」

 

午後10時を少し回った頃、WEST BROADWAY の道行く人々を眺め

つつ、涼風にあたりながら待つこと実に10分、「あ、あのキャブだ、」ほそ

ながーい人影が近づいて来る。ボク「ここ、ここ」ヒロト「こんばんわーー」

2001年7月12日午後10時23分、天才、甲本ヒロトと山本正之の両名

は、NY、SOHOの一角で、再会の喜びにひたる。

結局、はやく何かを飲み食いしたい、のと、はやく座って話しをしたい、のと

の理由で、PRINCEストリートのカフェに、はいろーず。

店の女の子に、食事はするのか、と聞かれてヒロトくん、「YEAH,くう」

と答えてる。かわいい。ドイツビールとスピナッチサラダとマスルズのオイル

蒸しで、かんぱーい。2時間くらいかなあ、お店がクローズするまで、何を話

したのかよく覚えていない。気の合うヤツとは、いつもそうだ。そこに一緒に

いるだけで、もうOKなんだな。深夜1時近く、ヒロトくんは「ぼく、だいじ

ょうぶです、ここからTAXIに乗れます、」、ボク「そうかい、ほんじゃあ

ね、」「まさゆきさん、あさって、昼か夜、もういっかい、遊びましょ、」

「うん、もちろんだよ、じゃあ午前中におたがいが電話をしよう」「はい、そ

うしましょう」

PRINCEストリートの青い月灯りを背にうけて、甲本ヒロト、TAXIを

待つあいだ、ずっと、夜空を見上げていた。ボクは、2ブロック先から、ずっ

とそれを見守っていた。(夜空を見上げていたので、TAXIが来ても気づか

ず、数台やりすごしてしまったなどと、予想するのは、よそう。)

 

翌13日はハーレムへ行き、シルビアズでブランチのサーモンケイクとホーム

フライポテトをいただく。午後は夕刻までピアノを弾いて、ディナーは、LA

GIOCONDAのシーフードのパスタ、ワインはCHANTIにした。

 

翌14日、午前10時半、ヒロトくんに電話、彼はお昼から夕方まで、グリニ

ッヂの中古レコード屋、おもちゃ屋をフラランするという。ボクもシロクマを

求めてそのあたりをフラランの予定、ほんじゃあ、待ち合わせを決めないで、

お互い、気ままにフラランして、もしも、バッタリ「ビレッジの奇跡」なんて

ことになれば、とってもおもしろいね、と相談をまとめ、会えなければ、夕方

5時頃に、どちらかが電話をしましょ、と、きめた。

果たして二人は、グリニッヂビレッジでばったり会えたのか否か!

                                                           つづく

 

てのはうそ。会えなかったんですねえ。残念。俯瞰で見ていたとしたら、おそ

らくヒロトくんが店を出て角を曲がったすぐあとに、ボクが向こうの角から現

れ、その店に入って行ったんだろうね。でも楽しい「ヒロトくん探し」の数時

間でした。

午後4時30分、 SOHO の部屋に戻る。15分後、ヒロトくんから電話が

かかり、ボクは、6時に2ndアベニューの50thストリートの北西の角で

AK砲と待ち合わせをしてるから、キミもそこへおいでよ、おいしいパスタの

専門店に行くからさ、と告げると、彼、ノリノリで「オッケーです、ぼくはそ

のまえに五番街のNBAショップに寄ってゆきます、あと30分くらいしたら

ゆっくり出ます」、ここで私ちょっとした「へん」を感じる。今、4時45分

、待ち合わせは6時、あと1時間15分後。彼のホテルからフィフスのNBA

ショップまでは多分15分くらい。30分後に出ると、NBAに着くのは5時

半頃、そこから2nd50thまでは歩けば20分かかる、バスを使えば10

分弱だが、彼の口振りではどうやら歩くらしい。どちらにしてもNBAグッズ

をゆっくりは見ていられない。そんな「へん」も、NBAショップというヨダ

レアイテムに掻き消されて、ボク、「だったらさあ、ボクもNBA行くから、

こんどこそそこで偶然会おうよ」「いいですねえ、絶対、偶然会えますねえ」

「うん、じゃあ、あとでね、」「はいはい、あ、と、で、」

ボクの部屋からNBAまでは20分くらいかかる、おっと、すぐ出なきゃ30

分も見ていられないぞ、GO!

途中CITIBANKに寄ったりして、5時15分に、ボクはNBAショップ

に着いた。Tシャツやキャップやバッグを手に取りながら、ときどき、サーク

ルスロープの手摺から下を見るも、彼はいない。5時45分になった。もうだ

めだ。あきらめよう。ああ!そうか、彼は、ここに寄ると間に合わないと悟り

先にあっちへ行ったんだな、と解釈して、バス停に行く。ところが、その時に

限ってバスが来ない。ええーい、TAXIだ、バタン、ブオーー、キィイー、

6時ピッタリに2nd50thに到着。しかし、ヒロトくんの姿も無ければ、

AK砲もいない。あれええーー、ボク、時間まちがえたのかなあーー、と不安

になり始めるころ、3rdアベニューの方から、AK砲が走って来る、

「すいませーーーん、ごめんなさーーい」AK砲、息も絶えだえ。

「いやあ、それよりもさあ、もうひとりが、まだ来ないんだよ」

そう言ったのが6時12分。

3人でしばらくそこで待つ。ボク、「やっぱり、かれは、7時だと勘違いして

ると思うんだ、だって、電話でへんだったもの、なぜか落ち着いていたもの」

AK砲、「きっとそうですよ、じゃあ、あと30分くらいですから、ここで待

ってましょうよ、」「そうだねえ、じゃあ、せっかくだから君たち、あそこの

スーパーでも行って、なにか雑貨品とかジャムとか見ておいでよ」、

AK砲、飛び上がって「ああ!そうだった、オレンジチョコ、まだ買ってなか

                   った!いってきまあーーす」、

またひとりになった。あと20分で7時、改築途中のビルにもたれて、電子辞

書の虫食いスペルゲームで遊ぶ。おでこの先の信号が何回変わっただろうか、

もうすぐ7時になるだろう頃、右の視界に、ほそながーい人影。

「まっさゆっきさん、」(ニコニコ)。

「おお、ヒロトくん、やっと会えたよ、、1、時間、まちがえて、ない?」

「えええ?」ヒロト、焦る。ボク、「6時だったんだけど」、ヒロト、狼狽!

「うわああー、だからあの時電話で、なんかおかしかったんですね、うわあー

 すみません、ごめんなさい、あああ、どうしよう」ヒロト、しゃがみこみ、

「NBAショップでサークルスロープから下を見て、まさゆきさんまだかなー

 って、あれ、まさゆきさんのまったく1時間後だったんですね、あああー」

もう、半分泣き顔。

そこへAK砲、明るく帰って来る「ただいまーー、あら、やっぱり、、こんば

んわー」、ヒロトくんAK砲に平身低頭あやまる。AK砲全然気にしてない。

ヒロトくん、「もう、今日はなんでもします、芸者もやります。」、

ボク、「いいから、いいから、さ、忘れてさ、パスタのまわし食いしようぜ」

「はあーーい」

そして4人は安くておいしいパスタプレストに入り、ハイネケンやらベックス

やらコロナやらあげくに白ワインやら、じゃんじゃん豪遊。料理も「おいしい

いーー」、そして1stアベニューのスターバックス1号店(とボクは思い込

んでいる)に親睦の場所を移し、しばらくしゃべくる。これまた、何を話した

か、よく覚えていない。ただひとつ、甲本ヒロトがお菓子おたくであったこと

は確認した。

49thのクロスタウンのバスにAK砲を乗せ、ボクとヒロトくんは、地下鉄

の駅までゆっくり歩く。TRAIN6、緑のラインだ。二人で乗り込む。

土曜日の夜、乗客たちはみんな、お酒を飲んでいたみたい、顔がさくら色、

でも、ぜんぜん酒くさくない、そうか、洋酒だからな。

23rdの駅に着く。ヒロトくん、降りる。

「まさゆきさん、またね、すごく楽しかったです、」、

ドア、閉まる。ボク、

「オレも。」

TRAIN6、走る。

 

翌15日、ヒロトくんはクルマでオーランドへ。ボクはもう一日SOHO。

シカゴの出張から帰ってきたドリアン・ベンコイルと、「カッピングカフェ」

でランチ。その後ひとりでベッドに寝ころび、読み残していた「紅い白描」の

結末まで読み切る。夕刻、チャイナタウンで、1ドルの怪しいヤキキシメンを

買い、夜、それをあたためてビールとともに夕食。

翌16日、パッキングをして、引っ越し。あと2日間は、いつもの街,LEX

だ。午後、51stのホテルに着く。古いけど、きれいで、落ち着く部屋。

翌17日、YMCAのプールに。アメリカの水で、バタフライ、初泳ぎ。

午後、やっと仕事だ。つまり、CD探し。トム・ウエイツ、サッチモ、ライチ

ャスブラザース、などを買いこむ。

夕方、雷雨の中、ブルックリンのお気に入りのハンバーガー屋へ行くも、売り

切れ。ホットドッグを2個食べて、地下鉄TRAIN・Aで帰る。

夜9時50分、8ブロック北の映画館でレイトショーの「AI」を見る。

 

翌18日、NH9便にて、NYをOUT。

JFKで、BABARにチョコレートを買う。「自由の女神チョコ」。

$4,99、サイフの中にラッキーペニーが2個だけ残った。

座席はすいていて、右も左も前も後ろも、誰もいない。

ゆっくりと和食をいただき、ボルドーを飲み、眠った。

 

これからFIFTIES。

父が、「しっかりやれよ」と、空で微笑んだ。

 

 

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