山本正之のズンバラ随筆  第26話 NY盛夏の涼遊

 

JFKの入国審査のあと、大きく[OUT]と書かれたドアを出て、TAXI

乗場に。きょうはいつもとはちがう。訳あって、LEXのコンドミニアムが使

えないので、かわりに SOHO のアパートを都合してもらった。ドライバー

に告げる。「To the SOHO  please」 運転手聞き返す 「where exactry?」

       「 Oh shure thats WEST BROAD WAY bet.the PRINCE & SPRING

 

話しに聞いてた、居眠りをしているじいちゃんのガードマンの前に、車は滑り

着く。ボク、黒髪の女がスキだという白人の運転手(NYに着くとボクはまず

タクシーの運転手とベラベラしゃべる。わかってもわかんなくても、とにかく

しゃべり続ける。空港から街まで約50分、これが、ボクのこれからの、英語

の練習のすべてだ)に、チップを多めに渡し、じいちゃんを起こす。

じいちゃんびっくり飛び起きて、オートロックのブザーを押す。サンクス。

部屋に入る。ビリジアン色のベッドカバー、白木のダイニングテーブル、アン

ティークなデスク、そしてスタンウェイのグランドピアノ。

 

パッパッとトランクを開け、ダイニングのカウンターの椅子に、1週間分の

Tシャツや、ソックスや、下着やらをポンポンっと投げ乗せる。

パスポートとキャッシュを、薬品を入れて来たシャワシャワ袋に入れ変え、即

街に飛び出す。

 

SOHOとは、 SOUTH OF HOUSTON の略。マンハッタンではかなり南側に位置

し、島の先が三角になるあたりから、ハドソン川の冷たく乾燥した風が吹き届

き、たとえ気温は30度でも、五六歩あるくうちに、汗が乾いてしまう。

真っ青な空と白い雲、高くても8階程度の築90年の建物、その建物に入って

いる、たくさんのブティック、ギャラリー。云うのがくやしいけど、天野嘉孝

も、このあたりで絵を描いている(アイツ、いつも事務所から、「SOHOの

アトリエでの個展のご案内」なんてDMをよこすんだぜ、もともとSOHOを

薦めたのは、このボクなのになあ)。東に5分歩けば、自然食の店DEAN&

DELUCAがある。そこから南に10分歩けば、もう、チャイナタウンだ。

でも、ボクは地下鉄Nラインで、UPTOWN、北へ向かった。

 

LEX街の老婆は、ピンクのシャツを着ていた。いつもの動きをしていた。

ボクはその前を通る時「おばあちゃん、」と、声に出した。そうしようと決め

ていたから。だけど老婆はしらんふり。ボクを無視していつもの動きだ。

ボクは、スポーツオーソリティーでソックスとリュックを買い、ビッグファー

マシーでコップとハサミとセロテープを買い、一旦、SOHOに戻ってから、

29丁目のドリアン・ベンコイルの家を訪ねた。

 

ドリアンの友情のハグと、アニーのおいしい料理と、ヴィラのキッスとリリー

の泣き声と、そして、もう一度!、2回目の!、1951年から数えて50年

め、そうなんです、日付変更線を越えれば、ボクの50歳のお誕生日は、2日

あるのです。これこそが、私の「壮大なる計画」の核心であった。

 

さて、翌12日、ニューヨーク友の会の有志メンバーとグランドセントラルで

待ち合わせ。作中君と妹のマミちゃん(これが兄貴に似ずカワイイんだ)は、

博物館のホネになりたいというので、そちらに派遣し、ボクは、MASAと歩

くツアー第3期生の、アキコとキミコの「AK砲」と肩組み腕組み、チェルシ

ーへと向かう。のであった。

 

チェルシー(23thストリート地域)の西の突端は、ボクとしても初体験。

フルトン港のように、古い小さいボートが繋がれて、ギィィーギィイーって鳴

っている。ああ、眠ってるんだね、イビキみたい。

バーがあって、キャプテン帽子をカブったじじいが「ウェルカム!」。

ボクらは、そこで何も飲まず、持参の水で喉を潤しながら、ずっと、ハドソン

の流れと、その上の風を見ていた。静かな、でも至近の時間が過ぎる。

バスに乗り、イーストヴィレッジへ。AK砲に古着の店と青空バザールの場所

を教え、ボクは舗道のガードレールの立て芯に背中と腰を預け、ちょこっと、

ぐりぐりって動かしたら、これが気持ちイイ!。結局AK砲の戻るまでの30

分間、しっかりガードレールの芯にマッサージしてもらい、タナボタ式にリフ

レッシュできました。

 

そして夕刻、三人でまたグランドセントラルに戻り、作中君と、妹のかわいい

マミちゃんと、合計5人で、チューダーグリルに向かい、シュリンプソテーの

パスタや、ステーキや、野菜のリゾットや、ブルックリンビールに、もーーぉ

でろでろになるのでした。

 

有志4人と別れて、SOHOのアパートに帰り着いたボク。おなかいっぱい。

留守番電話のランプが点滅しているのを確認。再生。

ああ、あの、愛しい声が聞こえてきた!。

 

「もしもし、まさゆきさん、ぼくです、ヒロトです、いま、チェルシーの

 ホテルにいます。ライブ、たのしくできました、いま、ふりーです、また、

 でんわ、しますね。」

 

うわっ

いっけねーぇーっ!ハイロウズのライブにみんなをつれてくって、

いってたんだったぁぁーー!

 

                                                          つづく