第一回 東京(東京都千代田区)

第一回は、私の出身地である東京。

最近の東京駅は目がまわる。山の手線の路線図を見てではなく、

目まぐるしく変化しているから。目まぐるしい、

といっても苦しいわけではなく、私にとっては嬉しいことだ。

七、八年ぐらい前は、東京というのは名ばかりな「東京?駅」

っていう感じで、ここから出発して私の旅は始まるのか…

と、落ち込む気持ちになるような駅だった。

今でいう「レトロな雰囲気漂う」駅だった。

でも、最近私が好んで飲んでいる、すばらしく美味しい紅茶は、

東京駅のスーパーでしか手にはいらない。

なんとも “おそるべし東京駅”になってきた。

東京に住んでいても旅行などに行かない限り、東京駅に行くことは

ないという東京人が多いと思う。

私の場合、仕事柄よく東京駅は利用しているので、東京駅が、もし、

巨大駅ビルになって、清潔でおしゃれな雰囲気漂う駅に変身してしまったら、

それはそれで寂しいと思うのだ。

“東京”の駅、というより、“東京駅田舎風”という感じがいつまでも

拭えない、そんな田舎風東京駅が意外といい味出している。

大丸デパート側


ここを通って、外に出るとすぐタクシー乗り場がある。
帰りはそこからよくタクシーに乗った



現代のサラリーマンにおけるほにゃらら、とかいう話題の時には

必ずと言っていい程、東京駅にご出勤のサラリーマンの方々の映像が映される。

2000年の東京駅は、サラリーマンの街、を抜け出そうとしている

ようにみえる。


 

お弁当好きだと自認している私には、東京駅はお弁当天国だ。

私は小さい頃、デパートに住んでみたいと思ったことがある。

東京駅大丸デパートは、今、まさに住みたい。

地下食品売場にある「おべんとう公園」は、

365日、ここで売っているお弁当でもいいぐらいに

さまざまな種類のお弁当が売っていて、ここに一歩足を踏み入れただけで、

お弁当を買わずして何を買うかという気にさせられる。

お弁当は、懐かしくて、冷たくてもあたたかくて、

大人になっても味わえるお子さまランチという感じがする。

大人になりきれてなくて、寂しがりやで甘えん坊じゃなくても、

日本人じゃなくても、誰もがお弁当が好きなはず、と私は思っている。

「おべんとう公園」のおすすめのお弁当は、

中華の「マダムリー」というお店の「六甲山」という三段になっている

飲茶弁当って感じのお弁当。これを買って列車に乗り込めば、

列車の中で本格的飲茶が味わえる。この中華のお店をはじめて知ったのは、

やはりデパートの食品街だった。マダムリーはバイキング方式の

中華のお惣菜のお店で、パン売場のように、入り口に、トレイと

専用の容器が置いてあってそれを選び、そして好きな中華のおかずを

好きな量だけ、自分でその容器に入れて、

最後にお店の人にグラムを計ってもらってお会計、という仕組みになっていて、

その、作業、がとても楽しい。

食べ放題バイキングと共通する、ワクワク作用がバイキングにはあるようだ。

そんなワクワク作用満点のマダムリーの中華弁当を買って、

いつも私は新幹線に乗り込んでいる。

他には、サンドイッチ専門の「グルメ」の、チキンサンドイッチ。

焼きたてであつあつの、ステーキ弁当。他にも食べてみたいお弁当は

たくさんある。けれど、いつも同じ、ひいきのお弁当ばかりを買ってしまう。

ところせましとお弁当たちが味を競っているように見える。

 

東京駅大丸デパートは、地下だけじゃない。

ファッションフロアーも最近頑張っている。

1Fは、アクセサリーと、服が。この階にある「UNTITLED」の服は

きれいな色が揃っていて、小物も可愛いデザインのものがある。

ここのお店では、赤のカシミアのアンサンブルのセーターを買ったことがある。

アクセサリーは、人気のある「4℃」というお店が入っていて、値段が手頃で、

デザインが豊富。アクセサリーを買いたいけど、どこのブランドのものが

いいか迷っている、という時は、ここのアクセサリーがおすすめ。

2Fは化粧品や靴などが。化粧品もいろんなブランドが揃っていて、

一度買ってみたいと思っているのが、ここにしか店舗がないという、

N.Y.SOHOからきた「INATURAL」の化粧品。

私は今まで、化粧品には全く無関心だった。そんな無関心な私を、

お化粧品好きにさせたのは、「シャネルの限定グロス」という存在だった。

それまで、「グロスって何?」というぐらいの化粧品音痴だった私が、

今では必ず雑誌で、限定化粧品の発売日はチェックしている。

ここの化粧品売場では、シャネルのリップクリームを購入したことが。

その時は、上のレストラン街に、かなり美味しいお寿司屋があり、

たまたま私の事務所のN先生と、Yさんと3人でお寿司を食べることになったが、

混んでて待っていた。

その時リップを忘れたことに気付き、急いで買いに来たのだ。

私は、外出する時には必ず、リップとハンカチはかかせない。

もし忘れたら、途中で買えたら買う。

リップは、食事をした後に必ずつけないと気がすまなくて、

ハンカチは、私は気温の差で、すぐ鼻がぐずぐずするので、かかせない

というのと、

食事の時に、私はよくこぼしたりするから、ナフキンがないお店の時には、

そのかわりにかかせない。

その時はまさに、下に行けば化粧品売場だったのですぐ買いに走って、

シャネルに吸い込まれるように行き、

危うく、口紅を買ってしまいそうだったが、欲しいと思った色が完売だったため、

リップクリームを購入したのだ。

シャネルのリップなんて、なんだかもったいなくて、あまり使っていない。

そして3Fには、レディスブランドの服やカフェがある。

この階がすごい。東京駅大丸のイメージを一気に変える雰囲気。

このフロアーで、男性を見かけたことがあまりない。

おしゃれで、清潔で、という感じでいっぱいで、ここが東京駅!?

というふうに思ったりする。

そんな雰囲気で、なごめるカフェが「INDIVI CAFE」。

ここでアイスミントティーなどを飲んでいると、東京駅の雑踏が嘘のようだ。

隣にはここのブランド「INDIVI」の服や雑貨が売っていて、とても色鮮やか。

私は、ここの雑貨の、やかんが気になっている。

最近買ったやかんは大きすぎた。一、二杯飲める分ぐらいのお湯が沸かせる

小さなやかんを探している。ここでやかんを買ったら、

東京駅からやかんを持って帰ることになる。

ここが東京駅!?

 

4Fには、「てもみん」が。いろんな場所にこのお店の店舗はあるが、

こういったデパートの中にあると安心して入れる。

私はとても肩こりなので、もうちょっとお安かったら毎日でも来たいくらいだ。

マッサージ初挑戦のため、とりあえず10分コースを試してみたが、とても

気持ち良かった。10分なんてあっという間かなと思ったが、

なかなかちょうどいい時間だった。こういうマッサージをしてくれるお店が

あるということが、ここが東京駅、ということをふと思い出させる。

しかし、順番を待っていたのが、みんな女性で、なんだか美容室で待っている

時のようだった。

今度は20分コースに挑戦だ。

 

おしゃれな食べ物を追求するなら、東京駅名店街八重洲口地下街にある

Mrs. Elizabeth Muffin」の、ちょっと甘めなマフィン。

スーパー成城石井で売っているキャンディ。そのとなりのお店の、ヨーグルト

アイス。

美味しくて、あまり他では売ってないものが買える。

カモミールキャンディが買いたかったが、この日はなかった。


大丸地下食品街が「おべんとう天国」なら、

八重洲地下街は「たべもの天国」だ。

その中で、私がかなりおすすめしたい店がある。それは

道頓堀くくる たこ家」。ここの明石焼とたこ焼は美味しい。

私は明石焼好きで、何故好きになったかというと、

兵庫県宝塚市の宝塚劇場の食堂で食べた明石焼が美味しかったことからなのだ。

以前、宝塚の女役として活躍されていた事務所の先輩がいたので、

仕事で大阪方面に行く時には必ず寄っていた。あの頃はよく宝塚を観ていた。

今でも機会があれば観に行きたいと思っている。

私は兵庫県のほうに宝塚を観に行った思い出でふたつほどいやな思い出がある。

両方とも自分がいけなかったことなのだが、

ひとつは、宝塚を観る前に、事務所の先輩の女役のAさんにあげるための

花を買いに花屋に行ったあと、食事をしに行ったら財布がないことに気付いて、

慌ててすぐ花屋に戻ったが、もう財布はみつからなかった。

もうひとつは、宝塚を観ていた時、私の隣にいたお客さんの拍手が

とても熱烈強引拍手で、その拍手でかなり気が散っていらいらしていたので、
観終わって劇場から出て来た時に、

「笠原さんですか?」というようなことを言われたのに、

しらんふりしてずんずんと歩いて行ってしまったのだ。

今でも、悪いことをしたなーと思う。あの時に笑顔で「どうも」って

言いたかった。けっこう気にするA型の私。

明石焼は東京では知らない人も多い。私は明石焼派なので、

これから東京駅に来る度に寄ってしまいそうなお店だ。

あっさりいきまひょ、おだしでいただくふんわり明石焼。

やっぱコテコテでんがな、特製ソースでとろーりたこ焼。

どちらも自慢の大だこ入り。

(箸入れの裏から引用)

スタンプカードをいただいてきた。「ぼちぼちでんな」と「めっちゃうまい」

までスタンプを押していただいた。ちなみに次は「ありがとさん」だ。


熱燗のようにあついおだしのいれものには注意してほしい。

ほんまにあつい。

 

よく駅の近くには、なんだかおもしろい雑貨を売っているお店が

あったりするが、東京駅にもある。

ここでは、最近はまっているあひるグッズ、と、犬シールを購入。

あひるうちわと、お風呂の栓にひっかけるようにチェーンがついている

あひる。念願の、お風呂専用あひるが東京駅で手に入った。

他にも、ピンクのくまのモモちゃんサンダーバニーミッフィーがいる。

それに、お化粧品や輸入菓子まである。

私はこのお店に一時間いてもきっと飽きない。

 

まだまだ東京駅は見所がたくさんある。

昔のままのお店と、新しいお店が入り混じる地下街。

時代錯誤な雰囲気がまた良かったり、その一方で、きれいで清潔な

地下街を望んだりもする。

わがままなお客に、これからも東京駅は変わっていくのだろう。

私は今の「東京駅田舎風」が案外、東京の姿をあらわしている気がする。

ここが出発地点か…と落ち込む気持ちは、もう今の東京駅にはない。

地下街が明るく活気があって、人もあふれていて、

かえって地上のほうが暗い雰囲気がある。

新しくするのは、これからは、東京駅の外側だ。

丸の内にできたというプラダも、東京駅より有楽町の駅からのほうが近い。

東京駅から、歩いていったが、

なんだか初めてプラダのお店に足を踏み入れたような

敷居の高さを感じてしまったのは、

東京駅シンドロームな何かがあったからのような気がする。

プラダのタオルらしきものが。

すんごい。いくらなのだろうか。

でもプラダって言わなきゃただの青いタオルだ。

これが、東京駅シンドローム。

(第一回 おわり)